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- Ainu Portrait- 継ぐべき肖像
南シベリアのシャーマンを訪ねたときのこと。
そこに暮らす遊牧民が「もうシャーマンは必要ない」と口にした。
彼がいうには私たちは世界がどのように成り立っているかを知っており,
薬だって手に入る、そして何よりも今はお金が必要なのだ。
確かに彼の言うように, 私たちの宇宙観や価値観が変われば,
それによって支えられる暮らしも変わってゆく。
原初のアニミズムがシャーマンを生み出したように,
近代文明に基づく価値の変容が
貨幣経済や様々なイデオロギーを生み出すのである。
しかし,
逆の言い方をすれば
私たちがどのような宇宙観や価値観を持つかということが
これからの未来を導く羅針盤になり得るということでもある。
ほんの100年前まで強い宇宙観のもとに生きてきたアイヌ。
歴史の中で多くのものを失いながらも, 現代において
アイヌという生き方を選ぶことは彼らの未来への羅針盤である。
ひとりひとりのコンパスの針を重ね合わせたとき,
そのベクトルは, 道を見失った今の時代をどこへ向かうのか,
という意思を私たちに教えてくれるはずである。
自らがどこから来てどこへ行くのか,
その道を選ぶときに私たちは生の強さを手に入れる。
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